事実は小説よりも樹なり・ハワイ編30
ハワイからの最後に、「オキナワ・セミナー」と「琉球國祭り太鼓」のこと (2003'05'21)




そして、ハワイと言ったら、何といってもこれでしょう。
ダイアモンド・ヘッドと広がるワイキキ・ビーチ!!

 先週16日、最後の試験を終え、とうとうハワイ大学での授業・試験共に全て終了した。しかし、終わったーと感慨にふけっている暇はなく、直ちに退寮の手続きをしなくてはならない。帰国までの宿を100mほど離れた別の寮のとっていたので、2つの寮の間を何往復かして荷物を運び、何とか手続きを済ます。夜には交換留学生で集まって友達のアパートでお別れパーティーをした。以前、 誕生日にサプライズ・パーティー をしてもらったあの部屋だ。ここで皆で集まってこうやって騒ぐのも最後だというのに、何故かそんな感じが全然しない。またすぐにでも、こうやって集まって、ばかなことを言い合い盛り上がっているのではという気がしてならないのだ。

 3年前の夏、オレゴン州に3週間短期留学した時のこと。プログラム最後の日、他のメンバーと別れる朝に不覚にも涙が出そうになった。 今回は、そういうこともない。いや、もしかしたらハワイから離陸する飛行機の中、1人でボロボロと泣きじゃくっているかもしれないが、多分そんなことはないと思う。別にハワイでの友達と仲良くない訳ではないし、ハワイに未練がない訳でもない。むしろ、帰りたくなくて帰りたくなくて仕方がないくらいだ。

 そもそも、ぼくのハワイでの目的は、1.英語力を磨く、2.沖縄基地問題の研究、3.サーフィンを覚える、の3つだった。留学を終えた今、これらのうち1つでも満足した結果を得られたものがあるかと問われれば、残念ながら無いと答えるしかない。でも逆に、当初は予想もしなかったような経験も手に入れられた。特に今年に入り、沖縄からハワイ大学に留学している学生や研究者の先生方、それにハワイの沖縄系移民の方々による「オキナワ・セミナー」と題する講座に出席できたことは、非常に有意義な経験であった。この講座は、沖縄からの学生達が、異国の地で改めて沖縄とは、自分たちのアイデンティティーとは何だろうと模索する中で生まれたもので、普通の授業とは別に昼休みや放課後を利用して、発表者も主催者も皆、手弁当で行ったものだった。講座の内容は、沖縄の民俗芸能、自然、歴史、文化、産業等、多岐に渡った。それらを、沖縄の中からでなく、外からの視点で改めて考察を行ったことは興味深かったし、また風土・文化等で類似点の多いハワイと比較しても、両者の特徴がより際立って良かったと思う。

 奇しくも、来る8月29日〜9月2日にかけて、世界の沖縄移民が集まる「世界のウチナーンチュ大会」なるものが、ハワイにて開催されることになった。その一環として、学生による会議も予定されており、この「オキナワ・セミナー」のメンバーによって運営されることとなった。そのため、ぼくも8月末には再度ハワイを訪れる予定だ。

 また、この「オキナワ・セミナー」での出会いや情報を通じて、3月頃から「琉球國祭り太鼓」というものを習うようになった。「琉球國祭り太鼓は、沖縄の伝統的な『エイサー』をベースに、空手の型を取り入れた独特の振り付けとダイナミックなバチさばきで今や沖縄を代表し、若者に圧倒的な人気を誇る太鼓集団」(「琉球國祭り太鼓」ホームページより)である。 この「琉球國祭り太鼓」の支部がハワイにもあり、太鼓を叩く格好良い姿に魅かれ、そこに参加することにしたのだ。もともと空手を長くやっていたので、この「琉球國祭り太鼓」の動きは親近感がもてたし、また教えてくれる地元の高校生達と友達になれたのも良かった。彼らは戦後ハワイに移民してきた新1世の子供達で、いわば新2世とでも言う世代なのだが、ハワイに限らず世界中にいるこういった新2世が、現在もっとも堪能な日英両語のバイリンガルであると言えよう。話しながら、自分もこのくらい日英両語を使いこなせるようになれれば良いものだなと思ったものだ。

 先セメスターよりも付いていけるようになった授業、素晴らしい自然環境、そして「オキナワ・セミナー」や「琉球國祭り太鼓」といった日々の生活。

 交換留学生の友達がハワイを経つ前日、一緒に大学近くの「バビーズ」というカフェへ行った。「モチアイス」という、雪見大福のようなアイスが有名なカフェで、抹茶や桜、モカ、チョコミントといった様々な味のそれを頬張りながら、窓の外のハワイの日差しを眺めていた。そうしたら、こういった環境の中、こういった美味しいもの食べて、のんびりと時間を過ごせるのは、実は最高に贅沢なのではないかと思えてきた。きっと後から、ハワイで過ごしたこんな何気ない日々を思い出して、あの時は最高だったなーと思い出すことがあるに違いないと確信した。

 しかし、今まで何度もそんな経験があった。初めて一人旅をし、これから東京に帰るという日の朝、テラスのデッキ・チェアーに寝っころがって、煙草を吹かしながら眺めていた沖縄の空。バンクーバーの海辺のレストランで、潮の香りの中で食べたスモーク・サーモン・ピザのあの味。バリ島の宮殿のようなリゾート・ホテルで、大きく水しぶきをあげる噴水越しに見た、視界の全てに広がる大きな海。その度に、こんな満ち足りた気分は初めてだと感じ、そして、それと同じ程の、もしくはそれ以上の経験に、上塗りするかのように遭遇してきている。

 だから、今度も楽観視しているのだ。ハワイは最高だったし、だからでこそ帰りたくない。でも、大丈夫。きっと未来には、それ以上のものが待っている。日本に帰るチケットを取ってからの数週間、そうやってハワイを経つ決意と覚悟を少しずつ固めてきた。ハワイは大好きだけれども、そろそろ次の場所へと向かうことにしよう。そう、スナフキンの軌跡の果てに。



 さて、長い間留学の様子を書いてきましたが、今週末に日本に戻るため、ハワイから更新するのはこれが最後です。ただ、まだいくつか紹介しきれていない事柄があるため、来週以降もハワイ編を続けるつもりです。長い間、ご愛読ありがとうございました。そして、これからもよろしく。ALOHA!