事実は小説よりも樹なり 2004・35
入間航空祭 2 ブルーインパルス (2004'11'21)



ブルーインパルス
ブルーインパルスによるアクロバット飛行

 前回の、入間航空祭の話の続き。翌日の埼玉新聞によると、今年の入間航空祭は約18万人もの人出で賑わったという。先日のプロ野球の日本シリーズでさえ、1回の試合の観客動員数は2〜3万人といったところだ。それに比べると、いかに多くの人が集まったのかが分かる。

入間航空祭の人ごみ ◇航空機地上展示

 普段は滑走路として利用している飛行場地区において、航空機の地上展示が行われていた。しかし、18万人もの人が、午後から行われるブルーインパルスの曲技飛行のため、シートを広げて場所取りをしており、まるで花火大会のようである。(写真=人ごみと、その奥に並ぶブルーインパルス)

展示航空機  展示されていたのは、F-15要撃戦闘機や、E-2C早期警戒機など、約20種類の航空機。曲技飛行を行うブルーインパルスと同機種のT-4中等練習機と、C-1中型輸送機には、実際に触れたり内部に入ったり出来るようになっていたが、遊園地のような長蛇の列であった。その他ほとんどの航空機は触れることは一切できず、柵の外側から眺めるだけである。しかも、シートによる場所取りのため、柵まで近づくのにも一苦労で、じっくり見るなんて、とても出来ない状態であった。

ブルーインパルス ◇ブルーインパルス

 「ブルーインパルス」。ぼくは今回足を運ぶまで、「F-15」といった機種の名前の1つだと思っていた。しかし、それは間違いで、「ブルーインパルス」とは航空自衛隊唯一のアクロバットチームの通称なのだそうだ。正式には、宮城県松島基地の第4航空団に所属する「第11飛行隊」であり、航空自衛隊で初めての展示飛行を専門の任務とした飛行隊だという。てっきり、通常のパイロットが片手間にやっているものだと思っていたので、展示飛行を専門の任務としていると聞いて、さらにびっくり。

曲技飛行  入間航空祭に集まる人々の一番のお目当てが、この「ブルーインパルス」によるアクロバット飛行である。6機のT-4が大空で煙をはきながら隊列を組んで飛んだり、宙返りをしたりして観客を楽しませる。それぞれのアクロバット飛行には、「レインフォール」や「パーティカル」といった名前がついており、会場のスピーカーからは解説が実況中継されていた。2機がスモークをはきながら、大空にハートを描く曲技など、なかなかの圧巻。観客はみな大空を見上げ、曲技が決まると拍手が沸き起こっていた。

◇覚えた違和感

 18万人もの人出、特に小さな子供を連れた家族連れによって賑わい、焼きソバやだんごの露店は大繁盛。T-4中等練習機や、C-1中型輸送機の見学には、ディズニーランドかと思うような長蛇の列。ブルーインパルスの曲技飛行のために、シートを広げて場所取りをして、お菓子やジュースを食べながら開始時間を待つ図は、まるで花火大会のよう。

 どこにでもありそうな、秋の祝日の、家族のお出かけの風景である。ただ違うのは、そこが自衛隊の基地であり、展示されているのが戦闘機・軍用機であるということ。シートで場所取りまでしてカメラを抱えて心待ちにしているのは、ディズニーランドのパレードではなく、自衛隊機による展示飛行だということ。

 どうしても、一抹の違和感がぬぐえない。誤解のないように先に断っておくが、「自衛隊」や「入間航空祭」に対してではない。そうではなくて、自衛隊の基地に戦闘機を見に行くのを、観客の多くが、テーマパークにパレードを見に行くのと同じ感覚で訪れていることに、である。

 もしかしたら、戦闘のリアリィティー感じることなしに、のんきに歓声をあげていられることは、それはそれで“幸せ”なことなのかもしれない。ただし、そういった感覚でいるうちに、気が付いたら 「ゆでガエル」 になっていることが怖いのだ。「平和ボケ」という言葉がある。この日は、大いなる「平和ボケ」の風景を見たような気がした。