事実は小説よりも樹なり・ハワイ編26
留学報告書 (2003'04'21)




ハワイ大学に併設する米国連邦政府の研究機関
「イースト・ウエスト・センター」の建物の様子

 今週は、レポートと試験で多忙なため、以前、所属する早稲田大学に提出した、これからハワイ大学に留学する学生のための留学報告書を転載させて頂きます。

「ハワイ大学マノア校に留学して」
留学時期:2002年8月〜2003年5月予定 

留学の動機
 私は、2002年8月からハワイ大学マノア校に留学しており、これを書いている現在も留学真っ只中である。
 ハワイ大学を選んだ動機であるが、法学部での自分の研究テーマである「沖縄基地問題」および、その存在根拠となっている「日米安全保障条約」について、日本からの視点だけでなく、もう片方の当事者、米国からの視点でも考察したいと思ったのが、留学先に米国を選んだ理由だ。
 同時に沖縄にある米軍基地は、単に日本と米国だけでなく、「極東におけるキーストーン」といわれるように、東アジア・太平洋地域において大きな意味合いを持っている。
 そこで、この問題を「東アジア・太平洋地域」からの視点でも考察したいと思い、 その「米国からの視点」と「東アジア・太平洋地域からの視点」の両方を兼ね備えたハワイ大学を志望したというわけである。ハワイ大学には、その敷地内に米国連邦政府の研究機関「イースト&ウエスト・センター」も併設しており、そこでは米国や日本、沖縄、そしてアジア諸国から研究者たちが集まり研究を行っている。
 また、そもそも沖縄とハワイは、気候や文化、歴史等で共通している部分を多く持っており、そういった点にも興味を持ったのも動機の一つである。

出発前の準備
 ハワイ大学の願書提出の締め切りは、他の米国の大学と比べると遅く5月後半となっている。これは、それまで余裕を持っていられるというメリットの反面、出発前に慌しくなってしまうというデメリットも持ち合わせている。特にVISAの申請では間に合わないのではと心配になった。そういったVISAの申請や予防接種等は、ハワイ大学から書類がきたらすぐに行えるように用意しておき、素早く行動できるようにしておきたい。

留学先の受け入れ態勢
 ハワイ大学にはISS(International Student Services)という早稲田でいう国際教育センターのような機関が、留学生の受け入れ手続きを行っている。このISSでは、留学生向けのオリエンテーションやアクティビティーなども行っており、そういった場へ参加すれば友達も増える。また、交換留学生に関しては、OIA(Office of International Affairs)という機関が窓口となっており、ここのコーディネーターの方に渡航前後を通じて大変お世話になった。

留学前の心配や不安の変化 
 実のところ、留学前には不思議なことに心配も不安も感じなかった。もちろん、準備段階においてVISAが間に合うのかとか、着いてからの寮の確保、予防接種等、色々と心配になることはあったが、留学へ出発する当日は、1年間も日本をを離れ新しい場所で生活するというのに、何の心配も不安も感じず、まるで旅行にでも行くかのような気分であったのを覚えている。
 それには、いくつかの理由が考えられる。まず、前年度の交換留学生の方が帰国していたので、コンタクトを取って直接疑問や質問をぶつけてみたこと。ホノルルには日本人が多く訪れるため、旅行会社やカード会社等の緊急デスクの体制が整っており安心だったこと。そして、何より留学先がハワイだったということ。普通の人が4泊5日ほどでバカンスへ行くハワイに、自分は1年間暮らすんだと思ったら、どうしても期待や楽しみのほうが、心配や不安に勝ってしまったという訳である。

 さて、実際にハワイについてからであるが、ハワイ大学留学は、いわゆる留学生が直面すると言われている苦労を、恐らく他の世界中のどんな地域・国と比べて、一番感じないで生活できると思われる。
1.気候
 ハワイでは一年中を通して、半袖に半ズボンで過ごすことができる。元旦もワイキキ・ビーチは多くの観光客で賑わっていた。逆に夏は日本ほど暑くはない。そのため、寒い地域へ留学している人と比べ、寒さや洋服を気にしなくて済む。
2.食事
 日本食で食べられないものを見つけるのが大変なほど何でもある。日本食レストランはもとより、早稲田にもあるラーメンのえぞ菊や天下一品など日本のチェーン店も数多くあり、また近くのドラッグ・ストアでも多くの日本の食材を手に入れることができる。そこで手に入らないものも、スーパーの「ダイエー」があるので、そこまで行けば確実に手に入れることが出来る。
3.住宅
 今は「Gate Way」という10階建ての寮の7階に住んでいるのだが、ダイアモンド・ヘッドとワイキキの高層ビル群の眺めは、正に絶景である。ちょっと寂しくなった時なんかは、ベランダに出てワイキキの夜景を眺めていると、何だか元気が出てきて頑張ろうと思えるのだ。また、各2部屋ごとにシャワーと洗面所が付いているため、水回りが便利。
4.文化
 ハワイの住民構成は、白人25%、日系人25%、ハワイ人25%、その他中国系、韓国系、フィリピン系…といった感じで、バスなどに乗っていると様々な人種の乗客を目にする。そのため、米国本土の、白人が住民構成のほとんどを占めるような場所と比べ、だいぶ居心地が良い。もちろん、日本人観光客も至る所で目にする。日系人が多いため、例えばお正月には近所のドラッグ・ストアで普通に門松や鏡餅が売られており、私もハワイ出雲大社へ初詣に行ってきた。
5.友達
 ハワイ大学には、日本をはじめ世界中から来ている留学生はもとより、米国本土からハワイ大学へ進学してきた米国人学生も多くいる。そういった学生は米国人といえども、留学生と同じく、新しい場所へ1人でやってきているので友達になりやすい。またハワイでは、日本語を勉強している学生も数多くいるので、そういった学生ともすぐに打ち解けることが出来る。
6.英語
 ハワイ留学で、あえて問題といえば、この英語だろうか?日本人が多く、ここまで日本ナイズドしているため、そこまで英語が出来なくても暮らせてしまうのである。下手したら英語は大学の授業以外使わないという状況にも…。もちろん、米国人学生と多く話したり、映画やTVを見たりと、英語を上達させる方法はいくらでもあるので、あとは個人の心がけ次第であろう。

生活の知恵
 大学はホノルル市にあり、ワイキキやアラモアナからも近くなのだが、歩いて行くのは少し大変。そこで、ちょっとした移動のために自転車があると便利。また普段の生活のため、TVと冷蔵庫を持っていると重宝。冷蔵庫は寮から借りることもできる。中古品は大学構内の図書館横の掲示板に、多く個人売買情報が貼られているのでチェック。寮のベッドには布団は付いていないので、事前に申し込んでおくか、現地で買いに行くことになる。最後に携帯電話。無くても十分生活できるが、あると便利。ただSocial Security Number(社会保障番号)がないと、もしくは手に入れてから半年の間は高額なデポジットを払わないと購入できない。そのため、私はプリペイド・カード式の携帯電話を使っている。料金は大分割高。

文化の違いにより困った経験
 これに関しては、ハワイは前述したように、恐らく世界中のどの国・地域よりも、文化の違いで困るということが少ないと思う。アメリカの中でも、特に多様な人種が混在し、日系移民が多いため日本の文化も多く見受けられる。様々な文化の違いに驚かされ、興味を抱くことは多々あるとしても、それによって困ってしまうというほどのことは、未だ無い。

外国生活から学んだこと
 そういった意味で、ハワイは暮らしやすいだろうな、ということは渡航前から予想できていた。そのため、外国生活も留学生活もスムーズにいくだろうと思っており、よく言われるような留学中に壁にぶち当たったようになる、などという話は、自分には無縁だろうなと思っていた。しかし、やっぱり自分にも、授業中率先して喋ることが出来ない等、中々上手くいかないなと困難を感じるようなことが今までに何度もあった。これは、日本に、早稲田にいたままだったら、自分に奢り、気が付かなかったであろうことだと思う。それに気が付けたことが、自分が外国生活から学んだことである。

 私は、ハワイに留学して本当に良かったと思っている。皆さんも、そんな素敵な留学生活を送れることを願って止まない。