事実は小説よりも樹なり・ハワイ編25
ハワイ州政府ビル (2003'04'14)




ハワイ大学図書館横に咲いていた桜に似た花。
一瞬見間違うが、「BAKER'S SHOWER」という違う木だそうだ。

 先日、沖縄系米国人である、ハワイ州下院議員デニス・新垣氏に、ハワイ州政府ビルへと招待して頂いた。この州政府ビルには、知事室、上院議会、下院議会などがあり、ハワイ州政治の中心となっている。

 回廊式の州政府ビルは、中央が吹き抜けとなっており、写真のように内部から上を見上げると、まるで火山の中にいるようである。実は、その通り、これは火山もモチーフとしてデザインされたものであり、他にも、ビルを取り囲む池は海を、天井を支える柱はヤシの木を表しているそうである。

 このように、デザインにも特徴ある州政府ビルであるが、更に大きな特徴として、開放的な点が挙げられる。知事室、議会共に誰もが予約なしに自由に出入りすることが出来る。


 5階にある知事室前には、TV局のカメラが取材に来ていた。中に入ってみる。まず、手前の部屋では、歴代の知事の肖像画や、月の石の破片が飾られていた。奥の知事室では、丁度、学生が訪問していた。知事はあいにく不在のようであったが、代わりに副知事が対応していた。このように、知事室内部まで自由に訪問できるのは、米国50州の中でもかなり珍しいそうだ。


(左)歴代知事肖像画・(右)月の石の破片(ハワイ州旗の上)

 さて、1階に下りると、ハワイ王国最後の女王、リリウオカラニの像があった。彼女は1893年1月14日、王権を拡大する新しい憲法を公布する予定であったが、これに反対する白人勢力の革命により、同1月17日王位を追われ、ハワイ王国は消滅する。また、彼女は有名なハワイアン・ソング「アロハ・オエ」を作曲したことでも知られる。 彼女の像の手には、その憲法とアロハ・オエの楽譜が握られていた。

 また、1階には議会がある。ハワイ州議会は上下両院の2院制で、上院が議員定数25人の任期4年、下院が議員定数51人の任期2年となっている。選挙は上院が2年毎に半数改選であるのに対し、下院は51人全員が改選。両院とも小選挙区制で、現在は民主党が過半数を占めている。

 議会は、1月の第3水曜日から土・日曜と祝祭日を除き、60日間開会される。ぼくが訪れた日は41日目であった。通常議会の延長、特別議会も開会することが出来るが、予算の関係上あまり開会されないそうである。写真はデニス・新垣氏が所属する下院議会であるが、議会中央上部の金色のライトは太陽を表しており、上院議会にある月を表した貝で出来たライトと対を成しているそうである。

 議会の特色として、毎議会の初め、議員に招かれ議会見学に来た聴講者が各議員によって紹介される。予期せずぼくも紹介され、嬉し恥ずかしく感じた。加えて、「Floor Presentations」と呼ばれる、いわば名誉ハワイ市民とでもいう人たちが紹介される。これは、各界において特筆すべき活躍をした市民を毎議会ごとに招待し、その業績を称えるというもの。この日は2組招かれていた。こういった紹介だけで、大体30分から、長いときは1時間近くかけるそうである。この後、一旦休憩になるのだが、数多くの議員が、この「Floor Presentations」の方々に挨拶をするため長い列を作っていた。

 休憩後は、各委員会の会合となる。ぼくも、デニス・新垣氏と共に、委員会へと出席させて頂いた。人数の少ない委員会であったため、聴講席ではなく、新垣氏と、別の上院議員の間に座らせて頂いた。周りの委員の方々にも暖かく迎えて頂き感謝。

 州政府ビルは、知事室・上下議会の開放や、聴講者・市民へのもてなし、感謝の心、開かれた委員会など、いくつも「アロハ・スピリッツ(他人を思いやる心)」を感じられる場所であった。今回招待して頂いた下院議員、デニス・新垣氏に改めて御礼申し上げたい。