事実は小説よりも樹なり・ハワイ編17
グレート・アロハ・ラン (2003'02'18)




グレート・アロハ・ランに出場しました
これが、今回のゼッケン

 今、ハワイに友達が2人遊びに来ている。大学院生と大学生なのだが、日本の大学はこの時期すでに春休みに入っているので、旅行には最適のシーズンなのだ。丁度良いタイミングと、2人を口説いて、あるイベントに一緒に参加させることにした。毎年2月17日の祝日に開催され、1万人以上が参加する1大イベント。それが、「グレート・アロハ・ラン」だ。

 ホノルル市内の「アロハ・タワー」から、ホノルル空港近くの「アロハ・スタジアム」までの8.15マイル(約13キロ)を走るこのマラソンは、距離こそ短いが、ここハワイの地元民にはホノルル・マラソンを上回る人気のイベントなのだ。朝7時にスタート。普段は歩く機会など無い高速道路の上を走り、3箇所の給水所を経てゴールのアロハ・スタジアムを目指す。チャリティーのイベントで、速く走る人の他、ゆっくり走る人、歩く人、乳母車や車イスで参加する人も含めて開催される。ゼッケンも予想タイムの早い人から、白・黄・緑・ピンクと分けられ、前から順にスタートすることになる。もう1つの特徴は、コースの左側を、ハワイに駐屯するアメリカ軍の兵隊たちが、隊列を組んで走ることだ。部隊ごとに旗を持ち、揃いのTシャツを着て掛け声をかけながら走っていく。

 自分達は、日本からの友達の他に、ハワイ大学の友達も含め、総勢8人で参加した。12月に参加したホノルル・マラソンでは完走することが目的だったが、今回は距離が短いこともあり、記録を目指す。約13キロを1時間以内で走り切るのが目標だ。腕に1マイル(1.6キロ)あたりの目標タイムと、各給水所への目標到達時間を油性ペンで書いておいた。午前7時、号砲と共にスタートをする。

 隊列を組んで走る軍隊を上回るペースで走り、やがて彼らの前へと踊り出る。周りは一般ランナーのみ。やがて、2マイルの表示が見えた。目標タイムを20秒ほど上回っている。よし、このペースでいける。3マイルの表示からしばらくして最初の給水所。走りながら水を飲むのは中々難しく、顔にかけてしまう。

 4マイルを通過し、これでほぼ半分は走り終わったと思うのと同時に、普段練習しているときよりもハイペースで走っているため、結構苦しくなっているのも事実。2つ目の給水所を超え、6マイルあたりでほとほとしんどくなって、マラソンのレースで、初めて、もう歩いてしまおうかと思った。正確に言うと、前回のホノルル・マラソンでは、そこまで辛くなる前に大事をとって歩いてしまっていたので、これだけの距離を、これだけのハイペースで走り続けるのは初めての経験だったのだ。もうここまで頑張ったし、歩いて休んでも良いんじゃないかなと思ったが、せめて1時間は切れなくても、最後まで歩かずに走りぬいたといえるよう、その1点においては頑張ろうと思った。

 そして、7マイルの給水所。あと1マイルちょっとだと思ったら、やる気を回復する。時計を見ると、ここまでの目標タイムを2分ほど下回るタイム。頑張ったら、目標通り1時間を切れるかもしれないとスピード・アップしてみたが、やはりそれを維持できない。やがて、スタジアムへと続く道に入ったが、スピードを上げようとしても、もう足が言うことを聞いてくれない。ほぼ気力だけで走り続け、最後、スタジアム内のゴールへと向かう直線で死ぬ気でダッシュをする。2人ぐらいはこれで抜いてゴールイン。タイムは残念ながら1時間2分42秒。ゴールしてみると、この2分42秒が非常に悔しくて悔しくてたまらなかったが、ずっと近くを走っていた初老の白人のランナーに肩をポンと叩かれて、やはりマラソンはタイムじゃないなと思った。どれだけ、自分で自分に納得出来るだけ頑張ったかだ。

 以前、アメフトを観戦しに来たアロハ・スタジアムで、今日は自分がスタジアムの真ん中にいる。観るのも良いけど、自分がスタジアムの真ん中に立っている気分は格別だなと思いながら、後からゴールしてくる人達を眺めていた。