事実は小説よりも樹なり・ハワイ編16
虹色のキャンプ (2003'02'10)




今週はキャンプのはなし
こちらが、キャンプ場のマラエカハナビーチ

 観光客のハワイでの楽しみと言えば、ビーチで泳いだり、フラダンスを見たり、買物を楽しんだりといったことであろう。他には、ゴルフをしたり、スキューバ・ダイビングで海に潜ったり。多くのパック・ツアーでも、そのような内容が網羅されている。

 しかし、パックで来る観光旅行だと、ちょっと味わえない楽しみがハワイにはある。それが、キャンプだ。

 お金さえ払えば、事前準備や面倒な手続きを全てしてもらえて、美味しいところだけ楽しむことの出来るマリン・スポーツやアクティビィティと違い、計画を練る、スーパーへ買出しに行く、テントを皆で張る、がんばって火をおこすというプロセスそのものが大きな楽しみであるからだ。

 そんな訳で、週末を利用して、1泊2日でキャンプへと行ってきた。ギリシア人の男の子2人に、韓国人の女の子、マレーシア人の女の子、そして自分という国籍多彩なメンバー。5人も乗ったらぎゅうぎゅうになる小さな車に、更にテントとクーラーボックスも詰め込んで、オアフ島を北へ北へと北上する。海沿いの綺麗な景色の道路を、ラジオを大音響で流しながら走っていると、テンションは自然に上がってくる。

 ビーチ横のキャンプ場へ到着した後、さっそくテントを組み立てはじめる。テントを組み立てることなど初めての経験だった上に、日も暮れてしまっていたため手元がよく見えなかったが、何とか要領をつかんで作り上げる。次に焚き火をおこそうとしたのだが、新聞紙も薪も持ってくるのを忘れてしまったため、上手くいかない。新聞紙は、ビールの入ったいたボール紙で代用することが出来たが、薪に関しては、落ちている枝は海風で湿ってしまっている。もう諦めてビールを飲みはじめると、それでも結構明るいことに気づく。夜空を見上げると満月だった。月明かりの下で飲むビールも、中々に贅沢というものである。

 真夜中ほどまで盛り上がった後、一足先にテントへともぐり込んだ。他のメンバーは元気にまだまだ盛り上がっている。

 次の日の朝、何だか騒々しい音で目が覚めた。テントを出ると、周りにはニワトリがいっぱい。せわしなく、そこらを歩き回っていた。チョコレートやクッキーをつまんで、朝ごはんの代わりにする。改めて、太陽の下ビーチを散策してみて、その広大さと綺麗さを再認識する。1時間ほどしてテントに戻ると、テーブルの上の置いてあったはずのクッキーが何故か消滅。周りには、相変わらずせわしなく歩くニワトリたち…。どうやら全て彼らに食べられてしまったらしい。恐るべし。

 2日目は、テントをたたんだ後に、ノース・ショアーと呼ばれる、オアフ島北側の海をドライブした。ハレイワという街に着いてぶらぶらと散策していると、何だか良い匂いがしてきた。見ると、露天でチキンの丸焼きを売っている。しかも、一匹丸々で$7.50。これは安い。さっきは冗談で、テントの周りにいるニワトリを食べてやろうかなんて話していたが、この露天の香ばしい匂いにつられて皆で買うことにした。そのチキンを持って、波が高いことで有名なワイメア・ビーチへと向かう。ベンチに座って、海を見ながらそのチキンをむしゃぶりつく。やっぱり焼きたては美味い。ビーチでは、犬を連れた飼い主が、棒切れを海のほうに投げて、拾ってこさせようとしている。その犬も取ってこようとするものの、波を前に引き返すのが、また可愛い。お腹もいっぱいになり、木陰で半分眠ってまどろんでいると、白人の女の子がビキニを着て歩いているのが見えた。3人ほどで来ているみたいで、1人はウクレレを演奏している。その音色を聴きながら、何だか本当に楽園に来ているような気持ちになった。

 十分昼寝を取ったあと、帰路につく前に、ここノース・ショアーで有名なかき氷屋さん「マツモト・アイス」に寄った。アイスのようなカップに乗っけた、シェーブド・アイス(かき氷)に、虹色にシロップをかけたレインボー・アイスが人気で、いつも大混雑のお店だ。レインボー・アイスに更にバニラアイスとアズキが入ったマツモト・スペシャルを注文する。見た目もすごく綺麗で、評判通りやっぱり美味しい。レインボー色のシェーブド・アイスを食べていたら、本当に空に虹がかかりはじめた。あまりのタイミングの良さにびっくりしたが、日本で虹なんて、ここ何年間も見ていなかったので、何だか嬉しくなってしまった。虹は、シェーブド・アイスを食べ終わるのと共に、また空へと溶けていった。