事実は小説よりも樹なり
グローバル化の流れの中で (01'10'03)



先日ぼくの通う大学でオープンキャンパスがあった。
実は、ぼくはこういったオープンキャンパスの際などに、見学者を 大学構内を案内する「キャンパスツアー」のガイドをやっている。

 先日も実に多くの、高校生・受験生をはじめとする来訪者の方々があった。 皆、興味深くこちらの話を聞いてくださり、さらに「ツアー」の後、 個別に質問に来てくれたりする。大学での生活や、勉強についての質問が多いのだが、今回は、特にぼくが法学部だということもあり、法学部志望の方から沢山質問をいただいた。

 その中で、印象に残っている親子の方がいた。
やはり法学部志望の高校生と父親の親子だったのだが、 色々話しているうちに、その方達が
「やはりこれからは、ITと英語と法律が大切になりますよね。」
と仰っていたのが印象に残った。

 現在「ITと英語」の必要性は、嫌というほど声高に叫ばれている。 ましてや、ぼくのようにそろそろ就職が近づく段階になると、なおさら 自分自身、改めてそのことを実感する。
しかし、そこに、もう1つ「法律」と付け加える人は希少のような気がしたからだ。

 「ITと英語」のもたらすもの。それは、インターネットを初めとする情報技術と、そこでの共通言語である英語によるグローバル化である。
政治的にも、経済的にもグローバル化が進み、国境、人種を越えて活躍するNGO、NPOといったものが注目されている。
そこで、そのグローバル化の社会の中での価値判断のために、何が重要になってくるかと考えたとき、やはり「法律」、それも別に個別の条文を知っているということでなく、「法律的思考」いわば「リーガルマインド」といったものを、一般の市民も持つことだと思うのだ。

 一方、今回の「同時多発テロ」においても、テロリストは国家も国土も持たないグローバルな組織であったのは皮肉であった。
早稲田大学の、水島朝穂教授は2001年10月1日付けのホームページの「直言」で、今回のアメリカでの「同時多発テロ」のことに関し

「テロを実行した者たちが潜んでいる(とされる)国に対して『報復』を 行うことは許されない。 「武力復仇」を克服し、これを禁止するのが  国際法秩序である。」

と、書かれていた。
攻撃をされたから、武力で「報復」する。
これは、水島先生が言われているように、国際法秩序を崩壊させるものであるし、
そもそも、「法律的思考」から出される発想とは到底言えない。
社会はもう新しい世紀を迎えているにも関わらず、前世紀と同じことを繰り返してはならない。

 そんな中、これからの社会での「法律」の重要性を考えて 法学部を受験しようとしている高校生の親子に会えて、ぼくは少し希望に似た気持ちを感じた。