事実は小説よりも樹なり 2009・03
イッセー尾形さんの芝居を観る (2009'01'28)



 いつか観たい行きたいと思いつつも、人気が高く、なかなかチケットを入手できない芝居やコンサートがある。その一つ、イッセー尾形さんの一人芝居を、先日観ることができた。

 「イッセー尾形のこれからの生活2009」。元旦の御来光を拝みながらフラダンスを踊るおばさんや、ませた小学5年生の男児など8人の人物を、2時間ほどでユーモラスに演じていた。

 イッセーさんは、つかみがうまい。暗転の後、パッと舞台が明るくなった瞬間、その表情や体勢、最初の一言で観客席から笑いが起きる。あとはぐいぐいと、イッセーさんが演じる世界にのめり込まれていく。

 一つの演目は10分ほどだが、その人物の過去・未来など時間的な広がりと、周囲の人や生活環境など空間的な広がりが思わず想起されて、一つ一つの演目にもっと大きな物語が感じられる。

 8つの演目を観終わって感じたのは、例えて言うならば、フランス料理のフルコースを頂いたような、もしくは、板前おまかせのにぎり寿司を、カウンター越しに一つずつ食べたような余韻である。

 一つ一つ丹精に腕をふるった自慢の料理が出され、前菜あればスープやサラダ、メイン、デザートがあり、それぞれ違った味わいを、計算されてメニューが構成されている。

 料理も、最初の一口で旨さや驚きを感じることがあるが、イッセーさんの芝居も、そんな感じがする。暗転が明けた瞬間、おかしさや驚きがある。

 また、演目と演目の合間には、舞台下手で黙々と衣装替えをするのだが、この時間はいうなれば、フレンチの口直しのソルベや、寿司屋でのガリや茶といったところか。

 かつてテレビでイッセーさんの一人芝居を観たことがあったが、やはり空気まで感じられる生は違う。たっぷり堪能させてもらいました。ごちそうさまでした!