事実は小説よりも樹なり 2005・9
トルコへの旅 3「雪を被ったブルーモスク」 (2005'05'06)



ブルーモスク
ブルーモスクの名で有名なスルタンアフメット・ジャミィ
トルコを代表するイスラーム寺院

 翌朝、窓からの陽射しで目が覚めた。トルコで迎える初めての朝だ。夜中のうちに暖房が切れたらしく、部屋の中の空気はきんと冷えている。熱いシャワーを浴びて目を覚ます。

 昨晩、ずっと眠り続けていた人はダイスケくんといった。関西出身の同い年で、やはり昨日、日本からイスタンブールに到着したという。彼も含めて、同室の男4人で1階の食堂に朝食をとりに行った。

 メニューは、ゆで卵にオリーブの実、パンという簡単なもの。パンの付け合せにチーズ、バター、アプリコットジャムが用意されていた。パンはフランスパンに似ているが、「エキメッキ」というトルコのパンで、フランスパンと比べ内側がやわらかい。これが輪切りになってバスケットに山盛りになっている。少しでも食事代を節約せねばという事情もあり、これでもかというほど腹につめこんだ。不思議にどれだけ食べても飽きが来ない。
 飲み物としては、チャイとアップルティーが用意されていた。チャイはともかく、なぜアップルティー??と疑問に思ったが、「エルマ・チャイ」といって、トルコではよく飲まれているそうである。見た目は色が薄く、砂糖を入れずに飲んだところ、味も何だか薄くて物足りない。しかし、砂糖を入れると、さっぱりしているのに不思議と味に深みが出て、なかなか癖になる美味しさであった。

雪の道路  朝食を食べて、イスタンブールの街をさっそく散策してみることにした。昨日降った雪が道に積もっており、街全体が白く染まっている。ぐしょぐしょの足元にズボンの裾を濡らしながらも、心は浮き足立ってくる。

 まずは、通称「ブルーモスク」と呼ばれている、「スルタンアフメット・ジャミィ」を目指した。場所は宿から歩いて10分ほど。丸天井の大きなドームと、6本の尖塔は、遠くからでも目に飛び込んでくる。イスタンブールでも中心となる見どころで、世界各国からの多くの観光客でにぎわっている。当然、その観光客相手の物売りも多く、入口をくぐると、さっそく絵葉書を買わないかと言い寄られた。ちょうど、欲しかったところだったので交渉に応じる。
「この絵葉書の10枚セット。7ミルヨン(約560円)でいいぞ。」
「高い!いらない。」
「じゃあ、5ミルヨン(約400円)でどうだ?」
「いや、いらない。」
 すると向こうが聞いていた。
「じゃあ、いくらなら買うんだ?」
 ちょっと考えて答える。
「んー、1.5ミルヨン(約120円)。」
「分かった。1.5ミルヨンでいい。」
 こうして、めでたく交渉成立。結構、あっさり安くなるんだなと思っていたのだが、後から知ったところ、実は1ミルヨンまで安くしてもらえるらしい。

 ブルーモスクは荘厳だった。直径となるドームは、高さ43m、直径27.5mもあるらしい。1616年に建造されたというから、日本でいったら江戸時代初期である。ドームは、大ドームの他に、4つの副ドーム、さらに30もの小ドームがあるという。また、イスラム教のモスクに欠かせない尖塔が、6本と、普通のモスクに比べて多いことも特徴なのだそうである。

 ドーム内部には礼拝の時間で入ることが出来なかったため、外のベンチに腰掛け、さっそく絵葉書をかくことにした。澄みわたった青空に、雪を被ったドームが映えて、周りの観光客も盛んにシャッターを切っている。

サーレップ  ベンチの近くで、温かい飲み物を売るワゴンがあった。最初はチャイ売りかと思ったのだが、飲み物の見た目は白くてドロっとして、上にはカプチーノのようにシナモンパウダーがかかっている。1つ買って飲んでみたところ、食感はまるで甘酒のようで、味は甘い。名前は「サーレップ」と言うそうで、ランの球根から取った粉の飲み物なのだそうである。トルコというと、のびるアイス「ドンドルマ」が有名だが、ドンドルマもこのランの球根から取った粉を使って粘り気をだしているそうだ。

アヤソフィア  ともあれ、雪景色の中、トルコの寺院を眺めながら、トルコ風(?)甘酒をすする。ベンチの反対側に目をやると、これまたイスタンブール有数の見どころである「アヤソフィア博物館」が、どっしりと建っている。雪が空気中の不純物も洗い落としたみたいで、空はどこまでも澄み、薄い白い雲がドームの上にふわふわと浮かんでいた。