事実は小説よりも樹なり 2005・6
沖縄に免許合宿に行く 完結編 (2005'03'13)



かいほう民宿
沖縄での免許合宿中に泊まっていた民宿

 沖縄での免許合宿の話の続き。自動車学校に入校して、1週間目にして復習項目だらけになってしまったことは、すでに紹介した通り。その後、3回に渡り世界遺産の話を続けてきたが、肝心の運転免許は、果たして本当に取得することが出来たのか?

 思うに、世の中には2種類の人間がいる。「教習は得意だけれども、学科が苦手な人間」と、「学科は得意だけれども、教習は苦手な人間」の2種類である。もっと有り体に言ってしまえば、「運動は得意だけど、頭を使うのは苦手タイプ」と、「頭を使うほうが、運動するより気が楽だタイプ」ともいえる。

 もちろん、運動も頭も両方とも得意という「文武両道タイプ」や、運動も頭もどっちもダメというような、「もっと頑張りましょうタイプ」だっている。でも、高校時代を思い出して欲しい。成績も優秀で部活でもエース、なーんていう完璧な生徒はそんなにはいなかったはずだ。同じように、どっちもてんでダメという生徒も少なかったように思う。

 で、ぼくがどちらのタイプかというと、「頭を使うほうが、運動するより気が楽だタイプ」なのだ。特に、試験前の一夜漬けに関しては、大学卒業レベルの腕前である。そのため、学科の試験にはある程度の自信はあった。実際、仮免・本免の際にも学科試験は一発合格。

コース全景  一方、教習のほうは、本当に大変だった。周りの高校生は、復習項目も無く最短時間で見きわめをもらっている。それに対し、ぼくは復習項目がたまりにたまって、中々先に進むことが出来ないのだ。坂道発進とか、縦列駐車といった、手順さえ覚えれば出来ることは、そこまで問題ではないのだが、ハンドルの切り方やタイミング、クラッチをあげる足の動きなど、手順というより感覚で行う動きが、いつまでたってもスムーズに行えないのだ。「運動が苦手タイプ」は、ボール1つ投げるにしても変な動きをしてしまうように、ハンドル1つまわすにも、大袈裟で無駄な動きがあまりに多い。

 おかげで、終了・卒業検定ともに、それぞれ一回ずつ見きわめに落ちてしまった。普通の人より、多く教習時間を取っているにも関わらず、である。そのせいで、卒業予定日が3日遅くなり、東京へと帰る日の午前中に卒業検定を受けることになった。ここで落ちたら後が無い。

 卒業検定のコースは、教習所近くの薬局の横から、市民プール横までの約3km。助手席の教官の他に、別の受験者が1人後部座席に座り、3人1組になって運転する。信号も、交差点も、進路変更も、そつ無くこなしていった。このペースなら、大きな減点も無いはずだ。そう安心して、最後に停車しようとブレーキをかけて気が付いた。近くがT字路となっている!つまり、駐停車禁止の場所じゃないか!

 「すいません!駐停車禁止場所なので移動します!(どうしよ、どうしよ・・・)」
 「んー、良いよ、もうこのままで。」
 「(え、このままで良いって検定中止・・・?でも、教官の言うことには従っておかないと。)   わ、分かりました。すいません・・・。」

 その後、教習所のベンチで結果を待つ。同乗した高校生の男の子は、「運転、上手かったですよ。大丈夫ですよ。」と言ってくれたものの、駐停車禁止場所に停車してしまったら、一発で不合格である。教官の「んー、良いよ、もうこのままで。」の言葉の意味が、「まあ、ちゃんと気が付いたから良いよ」なのか、「もう検定中止だから、今さら移動しても意味無いから良いよ」なのかが気になる所だ。

 とうとう結果発表。結果は、「停車位置は以後、気を付けるように」という言葉と共に合格。ぎりぎりの合格とは言え、これで飛行機のチケットをキャンセルしないで済む。喜びよりも、安堵感がいっぱいに広がる。

 かくして、ぼくの沖縄免許合宿は終った。東京に戻り、4日後に本免試験を受験して晴れて免許取得。真新しい免許証を手にすると、20代半ばにして、ようやく大人になった気がした。