事実は小説よりも樹なり 2004・36
沖縄に免許合宿に行く (2004'12'26)



沖縄の空
自動車学校近くで撮った沖縄の空
この空が見たくて、今回で9度目の沖縄入りになる

 免許は、沖縄で取ると決めていた。
 以前雑誌か何かの文章で、劇作家・演出家の鴻上尚史さんが、沖縄・石垣島で免許を取ったと書いていた。加えて、ぼくの、皆とは違う方向へ行ってやろうという性格もあり、免許を取るときには、沖縄でとってやろうと思っていたのだ。何よりも、「免許取得のため」という理由だったら、やましいことなく、堂々と1ヶ月近くの間、大好きな沖縄に滞在できる。

 かくして、11月後半、沖縄へと向かった。ちょうど、大学の友人のツバサが免許取得を考えていたようで、2人一緒に沖縄本島中部にある自動車学校へと入校したのだ。

かいほう民宿  予想通りの辺ぴな場所に、自動車学校はあった。バス停も、コンビニも、最寄りのところまで歩いて15分。道は、夜には街灯がつかずに真っ暗になる。夏にはハブも出るらしい。しかし、海までだったら歩いて3分。教習所のコースからも、まだまだ夏の色をした海を臨むことができる。

 入校初日。『人の良さそうなおじいちゃん』といった校長先生から説明を聞いたあと、午後からさっそく運転となった。実は、運転をするのは最初ではない。大学1年生だった時に、体育で「自動車」という授業を取っていたことがあり、大学の敷地内のコースで何日か運転したことがあるのだ。

コース全景  そのため、気持ちの余裕もあった。要は、「走って、曲がって、止まる」ことが出来れば良いんだろう?そう思って、教習車を発進させ、コース内をぐるぐると周る。1時間の教習を終え、車を降りる際に教官に言われた。
 「飲み込みも早いみたいだから、まあこれから頑張ってよ。」
 何だ、車の運転なんて余裕じゃないか。これなら、適度に学科の勉強をして、残りの時間は泡盛でも飲んで気楽に過ごせば良いや。しかし、その考えが間違いだったことを、その後、嫌というほど思い知らされることとなる。

 教習3日目。若い女性の教官にあたり、すこしデレデレして運転をする。しかし、コース内の気ままなドライブという訳にはいかなかった。
 「ブレーキはポンピング!ハンドル回す時には、きちんと持ちかえて!」
 ハンドルのまわし方において、送りハンドルになっているために、無駄な動きが多いと指摘をされる。続いて、停車の練習のため、車を停車するよう指示された。
 「停車の仕方を見ていると、今回きちんと寄せられたのはたまたまね。」
 こうして、復習項目が増えていく。
 次の教官は、学科で丁寧に説明してくれる別の若い女性教官だった。技能でも優しく説明してもらえるものだと思って教習車に乗り込む。
 「ハンドル戻すのがはやい!いまどこ走っている?道路の中央になっているでしょ。もっとキープレフト走行を心がけて。ギアは4速まであげて。」
 「あっ、はい。分かりました。」
 「カーブ前には減速して、ギアを2速!」
 「ええと、ポンピングブレーキして、ギアを・・・(ガクッ)」
 「クラッチあげるときには、もっとゆっくりと一呼吸おいて!」

 今回、色々な教官と出会う中で感じたことは、学科の説明の親切・丁寧さと、技能での厳しさは反比例するということだ。学科の授業をさらっと行う教官は、技能の際にも細かい所まであまり突っ込まない。一方で、学科を丁寧に親切に行う教官は、技能の際にも、1つ1つ問題点を細かく指摘していくため、どうしても運転中の注意が多くなる。

 しかし、一度にブレーキを使いすぎると、ブレーキ液内に気泡が発生してブレーキが効かなくなる「ベーパー・ロック現象」のように、一度に問題点を指摘されすぎると、処理能力が追いつかなくなってしまう。かくして、復習項目が増えて、なかなか次の段階へと進むことができなくなってしまった。第1週の最後の土曜日には、1人の教官からこう言われるに至った。
 「このままだと間に合わないかもしれないから、校長先生に空いている時間に乗せてもらえるよう相談してみて。」
 やさしいおじいちゃんといった校長先生は、教習項目の進みの遅さを心配しつつ、快く応じてくれた。こうして、校長先生や副校長との個人レッスンが始まることとなった。果たして、免許はおろか、仮免許までも取得することはできるのか?続きは、また次回以降に。