事実は小説よりも樹なり 2004・30
三田の小山湯へ行く (2004'10'13)



富士山のペンキ絵
今回は銭湯の話
写真の富士山のペンキ絵は、
実は自宅の風呂の壁に貼ってある防水ポスター

 9月後半ある日の田町駅前。夜7時をまわり、駅は勤め帰りのサラリーマンでごった返している。この日は、「菊田教授の東京ヒートアイランド」でおなじみのキクと一緒に、麻布にある麻布十番温泉に行く約束をしていたのだ。いつも旅先で温泉に浸かっていることもあり、東京でも会えば二言目には「風呂行こう」というのがお決まりのパターンなのである。

 キクは、ちょうど相方の酒井氏と駅前でネタ合わせの練習をしているところであった。酒井氏とは、この日が初対面。ついでに、マッハッハのネタを見させてもらった。駅前のスペースで、ネタを合わせる2人。勤め帰りのOLは、関心も寄せずに足早に横を通り過ぎていく。ネタ見せの後、ダメだしを求められるが、漫才に対して客観的に批評するのはなかなか難しい。

 麻布までは、3人で田町から歩いて移動した。まだまだ蒸し暑く、肌に汗がべっとりとにじむ。心より風呂が恋しい。30分近く歩いただろうか。そびえ立つ六本木ヒルズのほど近く、麻布十番に到着したときに、信じられない結果が待っていた。「あ、シャッター閉まっている。定休日…。」

 しかし、一度その気になった以上、一風呂浴びないと収まらない。そこで、急遽一番近い銭湯を調べて向かうことにした。104番で聞いたところ、小山湯という銭湯が近くにあるらしい。交番で聞いたとおりに進み、路地を曲がる。昔ながらの下町の面影を残す住宅街の中に入り上を見上げると、あった、あった、煙突発見。

 小山湯ののれんをくぐると、入口には昔ながらの木製の下駄箱。1つ1つがやたら小さく、大人の靴だと片方しか入らないほど。きっと、想像もできないほど昔から使われているのだろう。中へと入ると番台があり、銭湯のイメージそのままの脱衣場と浴室が広がっている。しかし、よくよく見ると脱衣場は天井が高く荘厳な造りになっており、古い建物ながら、かなりしっかりと造られている。

 浴室で、キクと酒井氏と3人で並んで体を洗ったあとに湯船に入る。大概の銭湯がそうであるように、ここも温度が熱い。確かにぬるめの湯だと長湯できるが、やっぱり風呂は熱くないと、とも思う。カレーも、ちょっと辛いものよりかは、無茶苦茶辛いものを汗を拭き拭き食べるほうが好きな性格である。のぼせた頭で、ペンキ絵を眺めながら「やっぱ風呂だなぁ」としみじみ思う。考えてみれば、ホームシックなど皆無だったハワイ留学中、唯一恋しかったのが風呂であり温泉であった。

 十分満足して風呂から上がった後、牛乳でも飲もうかと冷蔵ケースをみると、昔ながらのラムネが売られていた。1本80円。緑のガラス瓶は飾りでなく本当にビー玉によって栓をされ、その上に紙ラベルで封がされている。栓抜きで、紙ラベルの上からしゅぽっとビー玉を押し出し、カラカラ音を立てながら飲んだ。ラムネが、しゅわーと風呂上がりの体に染み渡っていった。