事実は小説よりも樹なり 2004・27
屋久島への旅 5 
「民宿『すぎ蔵』でのBBQ」
(2004'09'15)



民宿「すぎ蔵」からの眺め
民宿「すぎ蔵」からのオーシャン・ビュー

 8月9日(月)
民宿「すぎ蔵」からの眺め  昨夜は暗くなってから民宿に着いたので分からなかったが、目を覚ますと、宿の眼下には一面に海が広がっていた。その海を臨む形でテラスが作られている。こんなロケーションに民宿を作ってしまうとは、何とも贅沢である。

 すでに先回までに何度か書いたが、屋久島への観光客はここ数年で確実に倍増しているようだ。屋久島へのフェリーは、かつてないほどに混み合い、湯泊温泉は観光地化されている。屋久島には、特産の「三岳」という焼酎があるのだが、今回訪れた際には、スーパーでは軒並み品切れしていた。主に地元の人々のために造られてきた酒が、観光客が買い占めるようになって、手に入りにくい状況が生まれている。

 なぜそれほどまでに、観光の人気が急騰したのか?理由としては、やはり世界自然遺産に登録されたことが大きいのだろう。一番有名である「縄文杉」は、以前まで登山口まで個々の車で行けたにもかかわらず、最近は朝に2本出発する乗合バスでしか行けないというのだ。そのため、登山道はごった返し、「縄文銀座」のようになっているという。

   誰もが向く方向とは、違った方向を向きたくなる性格である。それは、一緒に旅に行ったニョーリーやイッチもしかり。そんな訳で、この日に向かった先はというと、ゴルフ!案の定、ホールはガラガラ。屋久島まで来てゴルフをする観光客など、どうやら他にはいないようである。ラウンド中は、地元のグループ1組に会ったのみ。

 ゴルフをたっぷり楽しんだ後は、安房(あんぼう)という地区で遅めの昼食。小さな食堂でうどんを食べたら、よっぽどお腹が空いていそうに見えたのか、おかみさんに声をかけられた。「あんたたち、良かったらおにぎり食べる?」「え!良いんですか?いただきます!」こうして、うどんに加えておにぎり3個を平らげて、満腹になって今度は海に向かった。

 湯泊温泉の横の漁港近くでシュノーケルを楽しむ。ここは、昨日の一湊海水浴場よりも魚が多く、思わず時間を忘れてしまう。しかし、潮の流れも強く、気がついたらだいぶ流されてしまっていた。

   6時ごろに民宿に戻る。この日の夕食は、海が一望できるテラスでBBQ なのだ。ビールで乾杯。海の見えるロケーションで、BBQしながら飲むビールはまた格別である。沢山買ったはずの500ml缶が、またたく間になくなっていった。その後は、焼酎「三岳」。スーパーでは売切れていたが、民宿近くの酒屋では手に入れることができたのだ。

 それにしても、不思議なことがある。これだけのオーシャンビューの民宿を建てるには、資金だってかなり必要なはずだ。民宿の入口付近には、丸太で作った手製のミニサッカー場まである。しかし、管理人夫妻はとてもお若く、関西弁を話しているところから察するに、最近移住してきた様子なのだ。

 BBQしながら話を聞くと、この民宿、元々は個人宅として使われていたそうだ。しかし、その住人が引っ越してしまったため、いまは民宿として利用しているとのこと。夫妻は、持ち主から管理人として任されているそうなのだ。そのため、屋久島に移住してきたのも8ヶ月ほど前のこととのことという。

 夫妻は、最近結婚されたばかりの新婚さんだったのだが、2人の馴れ初めを聞くとこれが興味深い。どんどん引き込まれていき、お2人の迷惑も顧みず、根掘り葉掘りと質問攻めにしてしまった。気がついたら、すっかり深夜。もう景色は全然見えないテラスの席で、波が磯に叩きつく轟音だけが耳に残る。飲みすぎたためか、少しぼーっとした頭で、焼酎「三岳」の香りに包まれていた。