事実は小説よりも樹なり 2004・25
屋久島への旅 3 
「熊本ラーメン、九州新幹線、屋久島でシュノーケル」
(2004'09'01)



熊本城、堀のほとり
熊本城の堀のほとりにて

 8月7日(土)
 豚骨スープに背油が浮き、ニンニクたっぷりのやや太麺。そんなラーメンは、考えただけでも幸せになる。

 8月7日。岡山から鹿児島への移動の日。深夜に出発した夜行列車は、午前8時に終点の博多駅へと到着した。電車を乗り換え、まずは熊本駅を目指す。

 目当ては熊本ラーメン。バイト先の友達から聞いた、美味いと評判の「大黒ラーメン」へと食べに行った。店内には、有名人のサインや写真がずらりとはられている。

大黒ラーメン  味はというと、うん、美味い。ここではニンニクが、最初からたっぷりと入っている。ニンニクは大好きだが、逆にいうと、ニンニクさえ効いていれば、何でも美味く感じてしまうのがぼくの舌の欠点。そのため、ラーメンが美味いのか、それともニンニクが美味いのかが最後まで良く分からなかった。ま、美味けりゃなんでも良いんです。

 熊本駅を再度出発し、今度は八代駅へ。しかし、ここで思わぬ誤算があった。九州新幹線の開業に伴い、在来線は第3セクターになっていたのだ。つまり、青春18きっぷは使えない。終点までの乗車券は約2500円。ちなみに、新幹線の代金は約3500円。

九州新幹線  それならばと、新八代駅から九州新幹線「つばめ」に乗ることにする。倉敷でのモネの絵画と同様、このことも予想外のことだった。「つばめ」の車内は、およそ電車らしくない、和風の落ち着いた造りになっている。シートには木材がふんだんに使われ、ブラインドカーテンまでも「すだれ」で出来ており、何だか、落ち着いた和風ダイニングバーのようだ。

 「つばめ」での贅沢な時間はあっという間に過ぎ、川内駅で再度在来線に乗り換え。夕方5時半頃、鹿児島中央駅に着く。夜には、後から飛行機で東京からやってきたイッチと焼鳥を食べながら乾杯。深夜近くには、岡山からのニョーリーとも合流した。

8月8日(日)
 とうとう屋久島入りの日。8時半のフェリーに乗る。港には1時間前に行ったのだが、既に大量の観光客が並んでいた。5年前の夏にもフェリーだったが、こんなに混んではいなかったはずだ。単にお盆近くのシーズンだからか。それとも、屋久島へ向かう観光客が増えたのか。

フェリー  12時半。屋久島宮之浦港に到着。フェリーを降りるタラップで、目に空と海の青が飛び込んでくる。そのままレンタカーに乗り、「一湊海水浴場」へと向かった。ここは、以前の旅で記念すべき(?)最初のケガをした場所だ。沖にあるテトラポットまで泳いでみたのだが、いざ上ってみたら鋭利なフジツボだらけだったのだ。浜辺に戻ってきた時には、擦り傷だらけ。以来、旅仲間からついた仇名が「ケガ」。最近では、すっかり「ケガのプロ」扱いをされている。

 その「一湊海水浴場」へといってみたところ、何と沖のテトラポットがなくなっていた。どうやら海面から出た部分だけ、撤去したようである。そのため、近くまでシュノーケルで泳いでみると、海面下のテトラポットが10m程も積み上げられており、何だか海中遺跡のようでもあった。

 それにしても、こうしてシュノーケルをつけて海を泳ぐのは、一体いつ振りだろう。ハワイに留学していた時以来だから、1年以上も経っていることになる。水着とシュノーケルだけで、魚と一緒にたゆたっていると、まさに自然と一体になっている気がしてくる。耳に入るのは、波がゆれる音と自分の深呼吸の音だけ。10m以上も離れた水底を、フワフワ浮きながら眺めるのは、何だか空を飛んでいるような感じがする。この感じ、この気持ち。東京に戻ってきてから、ずっと忘れてしまっていた。

 たっぷりシュノーケリングを楽しんだ後、すっかりお腹も減っていた。何食べに行こうかという話になったとき、イッチが東京で聞いたという、ある店へ行こうという話になった。そのある店は、イッチが東京の職場で出会ったカメラマンから、強くお薦めされたというのだ。「屋久島空港近くに、東京でもなかなか味わえないイタリアンの店がある」。屋久島でイタリアン。正直、意外な感じもする。しかし、そのカメラマン曰く、「食後のコーヒーにまで手を抜いていない」、そんな本格的な店だという。

 海から車で走ること約20分。果たしてその店が見えてきた。本格イタリアンという割には、アイスクリームのスタンドのような小さな店舗。「Il Mare イル・マーレ」と看板には書かれている。そして、その味はというと・・・。続きは、また次回。