事実は小説よりも樹なり 2003・14
ただいま卒論執筆中 (2003'12'29)



波の上
一年の締めくくりは、沖縄の空と沖縄の話で。
という訳で、那覇の波の上。あー、沖縄行きたーい!

 今年も、あと数日で終わる。先日、誕生日を迎えたが、大学生として迎えるのは、恐らく今回が最後であろう。留学を含め5年間通った大学生活も、もう残りわずかだ。卒業を目前に控え、現在は卒論を執筆している。テーマは「沖縄の米軍基地問題」。

そもそも、ぼくが初めて沖縄へ訪れたのは、大学1年の夏休みのことであった。親友のニョーリー、キクと共に鹿児島から乗った飛行機は、沖縄本島の上を低空で飛行し、窓から見た海はエメラルドグリーンに輝いていた。そして、沖縄で過ごすうちに、そのゆったり流れる時間というか、空気みたいなものにすっかりはまってしまった。

 しかし同時に、観光客向けのリゾート施設、きれいな海や空の一方で、国道58号線沿いにどこまでも続く米軍基地のフェンスや、Yナンバー車(基地からの車)の引き起こす事故、いたる所で目にする本土への出稼ぎの求人チラシに、観光客の持つ楽園のイメージとは裏腹の、その場所に住む人々の現実を感じた。先述した旅客機の低空飛行も、米軍による、嘉手納ラプコンという航空機進入管制システムのために、旅客機は低空飛行を余儀なくされていたのである。決して観光客へのサービスのためではない。

 そして、それ以来何度か沖縄へ訪れるうちに、その楽園のイメージと現実とのギャップ、格差は何なのだろう、どうすれば沖縄に住む人々への厳しい現実は緩和されるのだろうと感じるようになったのである。

 1998年11月の沖縄県知事選挙では、普天間飛行場県内移設反対を表明する革新系の大田昌秀知事が、県内移設受入を表明する保守系の稲嶺恵一氏に敗れた。そして、2000年の那覇市の市長選挙でも、32年間革新市政が続いたにもかかわらず、保守系の翁長雄志氏が初当選した。米軍基地があることによる問題点は山ほどある。日本国憲法9条からその存在そのものの問題性に始まり、日本本土との負担の不平等性、反戦地主、婦女暴行のような治安への影響、騒音問題やサンゴ・土壌への環境問題、果てにはアメラジアン問題といった文化的な問題まで。しかし、そういったことを全てひっくるめても、沖縄の人々は「基地より経済」を選んだのである。そこにも、ある種の現実が横たわっている。東京で、蚊帳の外で見ているだけでは分からない、そういった現実までじっくりと検証し考えてみたいと思うのである。

 「ちゅらさん」のおばあ役でもお馴染みの沖縄の大女優、平良とみさん主演の演劇に、以下のような台詞がある。

 「基地の中に沖縄があります。そして、沖縄の中に日本の今を抱えているんだね」

 そもそも沖縄基地問題には、単に日本国憲法、日米安保の「問題」だけでなく、多くの「問題」が内包されており、様々な視点から多角的にこの問題について考えていくことが必要である。

 そして、その沖縄の問題点は、同時に、この日本の持つ問題の凝縮であり、だからでこそ、 沖縄のこれからの姿を考えることにより、この日本という国がこれから進んでいく方向も考えていきたいと思っている。

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 さて、2003年のトップページの更新は、今回で終わりです。今年は、日本に帰ってきた年半ばから、週1回の更新が、2日、3日と遅れてしまうことも多々ありました。それでも、定期的に見ていただいた皆さまには本当感謝です。また来年もよろしくお願いします。
 では、どうぞ良いお年を。