事実は小説よりも樹なり 2003・8
自衛隊観艦式1 「1枚のポスター」 (2003'11'03)



観艦式1 「1枚のポスター」01
自衛隊観艦式に行ってきました
写真中央が、インド洋への派遣で色々問題となった
イージス艦の「きりしま」

 海上自衛隊観艦式へと行ってきた。観艦式(かんかんしき)。読んで字のごとく、自衛隊の艦船を観る催し物である。しかし、多くの人は、「観艦式」と聞いても、あまりピンとこないのではないだろうか?少なくとも、ぼくは長い間、こんな催しがあることは知らなかった。何人かの友人に聞いたところ、横須賀や鎌倉といった自衛隊基地の近くに住んでいる人にはお馴染みの催しであるらしい。ぼくの住む練馬区は、東京といえども埼玉に程近い。そのため、埼玉県にある航空自衛隊入間(いるま)基地の「航空祭」のことは、小さい頃から知っていたが、観艦式のことは長らく知らなかった。

 入間基地の航空祭は、実は正に本日(03年11月3日)行われた。展示飛行や曲技飛行に加え、地上での航空機展示が主な内容である。要するに、見学者は地上から上空を眺めるという訳だ。一方、観艦式では見学者は抽選で艦船に乗船することができる。横須賀在住の友達の話によると、その乗船券がプラチナ・チケットと化しているそうで、応募の葉書を何十枚も出す人もいるようだ。「観艦式」自体は、今年は10月26日に行われたのだが、それに先駆けて体験航海が3日間、泊まっている艦船内部への一般公開が4日間行われた。計8日間に渡る催しである。ぼくが、観艦式のことを知った時には、既に乗船の応募は終了していたため、泊まっている艦船への一般公開へ行ってきた。練馬区在住のぼくにとって、横須賀まで出かけることは、ちょっとした旅である。

観艦式1 「1枚のポスター」02  そもそも、どこから、この観艦式のことを知ったのか?近所の図書館に、自衛隊の広報活動を案内するポスターが張ってあったのである。漢字にルビがふっていないことを考えると、恐らく大人向けのポスターであるが、それにしては文面が何だか子供向けのようでもある。大きく「駐屯地へようこそ 陸上自衛隊駐屯地のエンターテインメント」と書かれており、「走る戦車に乗ったぞ!」という戦車の体験搭乗をリポートした文面によると、「全部で10両近くが集まりましたが、始まるとアレヨアレヨと長蛇の列」だったそうだ。何だか、子供用絵本の文体のように感じてしまう。

観艦式1 「1枚のポスター」03  そもそも、そういったポスターが、区の図書館にフツーに貼られているのにも少し驚いた。自衛隊の存在が、何の違和感もない自明のものと変わりつつある。小泉首相は「自衛隊は軍隊だ」と国会で明言し、「国を守るための部隊である、国軍であると表現を改めた方がいい」と常々語っている。(朝日新聞11月3日社説より)今回張られていたポスターは、自衛隊のことを市民に身近に感じてもらおうとするPRポスターであったが、そのポスターが地区の図書館に普通に貼られているという事実に対し、受けて側の意識の変化を感じたのだ。

   ぼくがまだ小さかった頃、湾岸戦争以前には、市民の自衛隊に対する意識は大分現在とは異なっていたように思う。自衛隊の問題を論ずる時、そもそも自衛隊は憲法第9条第2項「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」、この条項に違反するという議論があった。翻って現在はどうか?今度の衆院選に際し、イラクへの自衛隊派遣問題について、自民党と民主党で派遣時期・条件で見解に相違はあるものの、民主党も自衛隊派遣そのものに反対しているわけではない。連立与党である公明党、保守新党も同様である。野党共産党は、今年6月に出した綱領改定案で、自衛隊については、現綱領の「解散を要求」を「国民の合意で解消に向かって前進を図る」に変え当面の存続を認めている。逆に、社民党は頑固に「憲法違反の自衛隊派遣に反対する。」と明言しているが、今回の衆院選で、党そのものの当面の存続が危うい状況である。これらも、市民の自衛隊に対する意識が、確実に変わってきていることの表れであろう。だからでこそ、前述のようなポスターがフツーに張ってあるのだ。そのうち近い将来、米軍の「予防的」先制攻撃に参加する自衛隊の様子を「米軍と一体の、アレヨアレヨの大進撃」と伝えるポスターが、図書館あたりにフツーに張ってあるかもしれない。

観艦式1 「1枚のポスター」04  さて、話が大分それてしまった。要は、そのポスターに「この秋の自衛隊イベントガイド」として、観艦式のお知らせが載っていたのである。ぼくは、卒論で沖縄の米軍基地問題のことを書く予定なのだが、基地や米軍、自衛隊のことについて、実際に見に行ったことがあまりに少ない。まずは、この目で実際に使われている艦船を見に行こう。そう思ったのが、観艦式の一般公開に足を運んだ経緯だ。

 前置きを話しているだけで、十分長くなってしまった。今回は、これくらいにして、実際の「観艦式」についての話は、また次週以降に続けることにする。